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弁護士記事 / 営業権、賃貸関係
執筆者: Tsuji France Law
2024 07/17
フランス法における商業賃貸借契約 Bail commercial 〜法律の落とし穴〜
フランスの商業賃貸借契約は最低9年間(3年、6年、9年)の期間が定められています。この期間中、家賃は通常、INSEE指数(ILC)に基づいて改定され、一定の上限があります。しかし、うっかりしているとこの上限が解除されるリスクも存在します。
家賃の上限解除のリスク
賃貸借契約が終了すると、貸主または借主(以下「テナント」)が特定の期間内に適切な行動を取らない場合、家賃の上限が解除されることがあります。
家賃の上限解除を避ける方法
契約期間が9年経過すると、商業賃貸借契約は自動的に黙示により延長され、同じ条件で続行されます。ただし、以下のケースを除きます。
- 貸主が更新、もしくは退去通知を出す場合
更新が行われない場合、テナントは退去による損害手当を受ける権利があります。
⚠️ テナントは、通知を受け取ったら2年以内に行動を取る必要があります。そうしないと、この通知に対して同意したとみなされます。
- テナントが更新、もしくは退去通知を出す場合
テナントが退去通知を行うか、賃貸借契約の更新を要求します。
⚠️ 貸主は、3ヶ月以内に行動を取る必要があります。そうしないと、これに同意したとみなされます。
12年を超えた場合
商業賃貸契約は長期にわたるため、満期を忘れてしまうことがあります。
→貸主の権利
賃貸借契約が12年(9年+黙示による延長期間3年)を超えると、家賃の上限が解除されます。現実の地価はILC指数よりも早く上昇するため、貸主は13年目から地価に基づいた家賃を設定できます。
→テナントとしての対応方法
⚠️ 黙示による延長と家賃の上限解除(そして大幅な家賃の上昇)を避けるためには、以下の手順にて、商業賃貸借契約の更新を期日内に正式に依頼することが重要です。
- 賃貸借契約の終了(通常9年)6ヶ月前から黙示による延長期間中に更新手続きを行う。黙示による延長期間3年を超える前に更新手続きをすることをお勧めします。
- 法律により書式が決まっているため、弁護士またはCommissaire de justiceに依頼して更新手続きを行う。これにより、家賃の上限解除を避けることができます。
⚠️ 貸主は、更新要求の通知を受け取ってから3ヶ月以内に、その受け入れまたは拒否を通知する必要があります。この期間が過ぎると、貸主は前の契約の更新を受け入れたとみなされます。つまり、同じ家賃での更新となります。
このように、商業賃貸借契約は期間が長いため、ついうっかり何もしない等のミスによってリスクが生じることがあります。書留やCommissaire de justiceによる通知を受け取ったら、放置せず、満期6ヶ月前にはアラートをつけるなどしてリスク管理を行いましょう。