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弁護士記事 / 会社法
執筆者: Tsuji France Law
2021 12/02
フランス会社法豆知識フランスの主な法人形態SARL・SASの比較
フランスで会社を設立する場合、どの形態が適しているか見ていきましょう。
フランスの中小企業は有限会社(SARL)か簡易型株式会社(SAS)のどちらかであることが多いです。
その他株式会社(Société Anonyme, SA)がありますが、SAは上場企業の場合はほとんどです。SAの株主は上場企業でなければ2名以上、上場企業であれば7名以上いる必要があります。
SCI (Société Civile Immobilière)など不動産所有を目的とする法人もありますが、SCIの場合は株主が2名以上いる必要があります。
有限会社SARL・EURL | 簡易型株式会社SAS・SASU | |
株主 | 1名以上 | 1名以上 |
経営幹部 | 1名以上(自然人) 少数株主または非出資者である代表者は、条件を満たせば雇用契約を結ぶことができる | 1名以上(自然人または法人) 代表者は、一定の要件(会社役員としての職務とは別個の職務内容、従属関係)を満たしている場合には雇用契約による職務も兼任できる。 |
最低資本金 | 1ユーロから | 1ユーロから |
株主総会の定足数や議決数 | 持ち分の25%、再度招集時は20% 定時総会⇒持ち分の50%+1 臨時総会⇒75%+1 | 定款自治 |
経営運営方法 | 多くは法律で定められている | 定款自治 |
株式譲渡 | 登記税3%(買い手負担)) 持分(SARL)の場合には、譲渡1件につき定額控除23,000ユーロと譲渡対象持分が会社の持分総数に占める割合に等しい金額 が控除される | 登記税0.1%(買い手負担) |
会計監査人 CAC | ・貸借対照表の合計額が4Mユーロ以上(2Mユーロ) ・年商8Mユーロ以上(4Mユーロ) ・従業員50名以上(25名) 上記2つ以上満たしている場合は会計監査人の任命義務あり。ただし子会社の場合は、上記括弧内の数字参照 | ・貸借対照表の合計額が4Mユーロ以上(2Mユーロ) ・年商8Mユーロ以上(4Mユーロ) ・従業員50名以上(25名) 上記2つ以上満たしている場合は会計監査人の任命義務あり。 ただし子会社の場合は、上記括弧内の数字参照 |
経営陣の社会保障制度 | TNS(被用者以外の自営業者制度) ただし筆頭株主でない経営陣や雇われ代表の場合は、Régime Général des Salariésと同じ制度に加入できる | Régime Général des Salarié制度(被用者と失業保険を除きほぼ同じ) |
ポイント
☆フランスでグループ会社を設立する場合、組織を簡素化する場合は、経営陣を法人にできるSASがおすすめです。なぜなら別法人をSASの代表者として任命することができるからです。
☆フランスで設立する会社の株主が複数いる場合で自由に定款内容を設定したい場合は、SASがおすすめです。
☆社会保障制度は、経営陣が筆頭株主である場合、フランスで長年被用者としてRégime Général des Salariésに加入していた場合は、引き続き同じ制度に加入できるSASがおすすめです。ただし、下記にも記載の通り、社会保険料は高くなります。SARLの場合、経営陣が筆頭株主である場合は、必然的に自営業者用の社会保険に加入する必要があります。
☆自営業者用の社会保障は、保険料は安いため、会社の負担が少なくて済みます(保険料を含む額面は手取額の1.35倍。それに対し、Régime Général des Salariésは1.69倍)。ただ自営業者用の社会保険は保障金額も低いため、任意保険(Contrat Madelin)に加入する選択肢もあります。Contrat Madelinの保険料も会社の経費として計上することができます。このように法人税の課税対象額を減額できる制度も活用できます。