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弁護士記事 / 会社法

会社法

執筆者: Tsuji France Law

2022 05/31

気になる自己資本金額 Capitaux propres

気になる自己資本金額 Capitaux propres

今年もフランスでは定時株主総会の季節がやってきました。フランス会社法上、決算決議は締め日から6ヶ月以内に行う必要があります。12月末締日の法人が多いため、5月から6月にかけては株主総会議事録作成その他関連書類の作成で大忙しです。

そこで毎年気になるのが損益計算書の収支(résultat)と貸借対照表の自己資本金額 (capitaux propres)。

景気が悪かったり、フランスで会社を設立して事業が軌道に乗るまでに自己資本金額が資本金の半分以下になることは多々あります。

フランスの会社法によると、会社の自己資本金額が資本金の半分以下になると、会社の継続もしくは閉鎖について締め日から4ヶ月以内に決議承認する必要があります。

具体的には、会社の自己資本金額が資本金額の半分以下になった場合、

1.株主総会の議事録にて自己資本金額が資本金額の半分以下になっていることを承認し、 会社の継続を決議する必要があります(継続しない場合は、会社の解散手続きを行います)。

そしてその決議の官報公告を行い、商業裁判所書記官に届出を行います。

そのため、自己資本金額が資本金額の半分を下回っていることが会社の登記簿(Extrait Kbis)に表示され、公になります。

2. 自己資本金額が初めて資本金額の半分になった会社の事業年度の3年後の締め日までに増資もしくは利益を出し、自己資本金額を資本金額の半分以上まで回復する必要があります(厳密には会社の継続を決議した事業年度から2事業年度締日がデッドラインとなります)。

例えば2019事業年度に自己資本金額が資本金額の半分を下回っていた場合、2022事業年度の締め日までには自己資本金額を回復している必要があります。

自己資本金額の回復は、増資・株主の債権放棄・利益を出すかのいずれかの方法にて行います。

なんと、フランス会社法によると、期日までに自己資本金額を回復しなければ、何人も会社の解散を裁判所に請求することができてしまうのです。

ただ、万が一そのような請求がされ、提訴されたとしても、裁判所から判決が下るまでには、自己資本金額が回復していればよいので、リスクは非常に低いです。なぜならフランスの裁判所の判決が出るまでは非常に時間がかかるからです。このような案件では原則軽く6ヶ月はかかります。

自己資本金が期日までに回復していなくても解散が命じられてしまうというリスクは少ないことから、徐々に利益を出し、徐々に自己資本金額を回復していくという選択をしても問題はないと考えます。

ただ、Extrait Kbis(フランスの会社の登記簿謄本)上、自己資本金額がマイナスであることが表示がされてしまうので、それによって取引先の減少等が懸念される場合は、増資や株主の債権放棄などによって自己資本金額を回復することをお勧めいたします。

逆にExtrait Kbisを入手すれば、そのような情報をチェックできるので、新たにフランスの会社と取引を始める際は、相手のExtrait Kbisをあらかじめチェックしておくとよいでしょう。

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