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Covid 19 関連情報

執筆者: Tsuji France Law

2020 05/23

営業停止命令と保険会社の対応

営業停止命令と保険会社の対応

パリ商業裁判所は、2020年5月22日に、Axa保険会社に対し、la perte d’exploitationによる損失を補償するように命じ、営業停止期間中の全売上高(100%)をレストラン経営者Stéphane Manigold氏(Maison Rostang社)に支払うように命じました[1]

売上高の額は査定される必要があり、査定前の現時点では、仮に45,000ユーロの支払いをAxa保険会社に命じました(これは3月中旬から5月末までの売上高の約65%に相当します)。

本訴訟では、レストラン経営者がAxa保険会社に対し、行政命令により事業が中断したため、営業収益が圧迫されるリスク(risque de la perte d’exploitation)の賠償を請求しました。

本件のRisque de la prete d’exploiationとは、なんらかの要因により(事業主の責に帰さない要因)、行政により営業停止命令が発令された場合に、営業停止中に得たであろう営業収益を保険会社が賠償するものです。

本訴訟では、レストラン経営者は、行政による営業停止命令による営業収益の減少は保険で補償されていること、今回の新型コロナウィルス対策の緊急事態は免責されていないと主張し、Axa保険会社は賠償義務があるとした。

それに対しAxa保険会社は、保険契約というのは、リスクの相互扶助の原則から成っており、皆でお金を出し合い、リスクに備えるものであり、コロナウィルスのようなパンデミックの場合は、リスクはすべての事業者が直面しているため、そもそも相互扶助の原則は成立せず、保険契約の対象にならないと主張しました。

本件では、Axa保険会社が負けましたが、Axa保険会社は上告する意思を示しました。同時に、Axa保険会社は、perte d’exploitationに加入したあらゆる業者に対し、今後提訴権を放棄することを条件に、最大4カ月間の売上高の20%に相当する額を限度に和解金として支払うことを提案するとのことです。

ちなみにパリ商業裁判所(1審)は、プロの裁判官ではなく、普段は商業活動を行っている商人から構成されています。そのため経営者側に有利な判決が出たのは無理もないと考えます。判決の本文も特に法的に納得のいく理由付けはされていません。そのためAxa保険会社は、プロの裁判官が判決を下す第2審に上告する意思を示しました。この第1審判決は第2審で覆る可能性もあります。

そのため事業を行っている方は、加入されたAssurance multirisque professionnelの保険約款をご確認ください。この保険に加入することは事業主であれば義務付けられていますが、営業収益が圧迫されるリスク(risque de perte d’exploitation)への加入は任意であります。そのため、まずはオプションとしてperte d’exploitation選んだか確認をする必要があります。

またこのリスクがカバーされている場合であっても、保険会社は、免責事項(clause d’exonération)を設けていて、カバーの対象から外れてしまう場合もあります。そのため免責事項もじっくりと分析する必要があります。

例えばある保険会社の場合は、微生物(micro organisme)に起因する営業停止命令による損失は免責事項に記載されています。コロナウィルスは微生物に該当するため、この度の新型コロナウィルス対策による緊急事態は免責事項になると解釈している保険会社がいます。

疫病やパンデミックの場合は免除されている場合も多いです。

また解釈が必要な免責条文や無制限に記載されている免責条文は、判例的には無効とされるケースが多いです。

[1] Ordonnance de référé d’heure à heure

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